HPVワクチン
●ヒトパピローマウィルス(human papillomavirus ; HPV)とは
HPVは人の粘膜に感染して腫瘍(ガン)やイボを発生させるウィルスです。
遺伝子型はたくさんあり、多くは自然に治りますが、一部はずっと感染を続け病気を引き起こしやすい遺伝子型があり、それらが子宮頸がんや尖圭コンジローマなどを引き起こすため、その予防目的でそれらの型が予防接種に用いられています。
例えば低リスク型の6, 11型は外陰部に尖圭コンジローマなどイボをたくさん作る性感染症の原因となります。
また高リスク型である16, 18,31,45型などの感染は、子宮頸がんや肛門がん、膣がん、外陰がん、陰茎がん、中咽頭癌などを引き起こす可能性があり、これらは全体の原因の半分以上を占めます。子宮頸がんについて言えば16, 18型がそれぞれ50%, 20%の原因となり若年者に多いと言われています。20代前半の発症者もあり、30-40代での患者が多数で、毎年3000人前後、命を落としてしまう非常に問題となる病気ですので、予防接種で予防できるならいいですよね。
●接種を受ける時期と間隔(接種対象年齢、回数、ワクチンの種類)
現在、2価、4価、9価の3種類があり、いずれも感染の成立を防ぐことが証明されており、腫瘍化の予防にも有用性が示されています。当院では4価、9価のワクチンを行っております。ただし、一旦持続感染が成立したHPVはワクチンを接種しても排除できないため、理想の接種時期は性交開始前ですが、開始後も接種は可能です。
スケジュール (標準的なもの) |
予防するもの | 対象年齢 性別 |
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シルガード9 (9価) |
初回接種が15歳未満の場合 2回接種:初回から6-12か月あけて2回目を打ちます。 3回接種:初回から2か月あけて2回目。3回目は2回目から4か月ほどあけて打ちます。 初回接種が15歳以上の場合 3回接種:初回から1か月以上(標準的には2か月)あけて2回目。2回目から3か月以上(標準的には4か月)あけて3回目。 |
15%の子宮頸がん(16, 18, 31, 33 , 45, 52, 58型)、尖圭コンジローマ(6, 11型)などのヒトパピローマウイルス感染症 | 9歳以上の女子 (公費で接種できるのは12-16歳となります) |
ガーダシル (4価) |
2回目は初回から2か月あけて接種。3回目は2回目から4か月あけて接種。 | 70%の子宮頸がん・肛門がん(16, 18型)、尖圭コンジローマ(6, 11型)などのヒトパピローマウイルス感染症 | 9歳以上の男女 (公費で接種できるのは12-16歳の女子のみ) |
●接種機会を逃した方のキャッチアップ接種
2022年4月から積極的な勧奨接種が中止されたために接種機会を逃した年代(1997年4月2日~2006年4月1日生まれ)の女性に対するキャッチアップ接種が開始となり、2025年3月末までは定期接種として無料で受けられます。
また、2022年3月までに自費でワクチンを受けた人に対して接種費用を払い戻す制度もあります(9価は対象外)。対象者、申請方法、償還額、申請期間等については下記秋田市ホームページを御覧ください。
https://www.city.akita.lg.jp/kurashi/kenko/1005370/1035940.html
●副作用
副反応として接種した場所の発赤、疼痛などがあります。本ワクチンの接種方法は筋肉注射ですので、数日間にわたり接種場所の筋肉痛が起こることがあります。
また、このワクチンは血管迷走神経反射(失神)を起こすことがあります。これは緊張が関連する場合が多いので、注射が苦手な方、過去に具合が悪くなったことがある方は申し出ていただければ寝た状態で接種をいたしますので気軽にお声がけください。
※予防接種ストレス関連反応(Immunization Stress-Related Responses : ISRR
以前HPVワクチン接種後に多様な神経症状が発生することが多く見られたため、勧奨接種が中止となった歴史があります。しかし、この症状は「HPVワクチン特有の副作用で打ってはいけない」というものではなく、以前の注射後の失神などの嫌な経験、注射に対する恐怖など予防接種に関連する「不安」など様々なストレスで誘発される、ということがわかってきました。その結果、接種後数日で起こる「解離性神経症状反応」と考えることが妥当という結論に至り、現在接種が再開されています。
接種に対して強い不安や恐怖がある場合には無理せずに相談してください。
●検討されている方へ
HPV感染症による子宮頸がん対策で最も重要なことは、HPVに感染しない、させない、早期発見です。
男性を介して感染する可能性があるため、本来であれば男性も定期接種に組み込まれるべきなのですが、日本ではまだガーダシルしか男性は接種できません(任意接種)。そのため、感染予防として定期接種の年代の方は必ずワクチンを受けたほうが良いと思います。それによって自身の感染を予防し他人への感染をさせないことにつながります。
また、ワクチン接種だけですべての子宮頸がんが防げるわけではありません。そのため検診による早期発見が重要ですが、検診受診率は欧米が約80%に対して日本は約40%と低く発見が遅れやすいのが問題となっています。
20歳以上で性交渉経験のある方はワクチン接種の有無に関わらず、子宮がん検診をしっかりと受けて早期発見に備えましょう。